それからしばらく須和家に居座った俺は、夕方になった頃にようやく帰ることにした。
梢は「夕飯まで食べていけばいいのに〜」って言ってくれたけど、それでなくても貴重な家族時間を奪ってしまったので丁重にお断りした。


「突然来ちゃってごめんね。今度はアポ取ってから来るからさ」


玄関まで見送りに来た梢たちに声をかけて、俺はスニーカーを履いて扉を開ける。
昼間よりはマシだけど、夏の熱気が体中を包み込んだ。


「次は見られちゃマズいもんは隠しておきなよ?」

「は、はーい」


俺の言葉に首をすくめる梢は、苦笑いしていた。
まず間違いなく、あの水着の写真は隠されることだろう。
それならばと提案してみる。


「あ、それか今度みんなで海かプール行っちゃう?」

「無理。絶対無理」


梢よりも先に拒否したのは他でもない、柊平だった。
うんざり呆れるを通り越して、怯えた顔になっていて笑える。


「私もパス。だって漏れなく久住も来るんでしょ?あの巨乳と一緒に水着になる勇気はありませんから」


梢は落ち込んだように肩を落とし、口をへの字にして自分の胸を見下ろしていた。
彼女の話によると、授乳中は母乳が作られる関係で胸が大きくなる……と言うのが一般的らしいのだが、特に大きさに変化を感じられないというのだ。可哀想に。


「ま、次に来る時は愛里ちゃんも連れてくるからさ!楽しみにしててよ!」


意気揚々と言葉をかけた俺に対して、2人ともなんとも言えない微妙な笑みを浮かべて目を合わせていた。
愛里ちゃんのことが苦手らしい。薄々感じてはいたけどね。
いいんだ、彼女の良さは俺だけが分かっていればそれで構わない。


俺は笑顔で彼らに手を振り、須和家をあとにした。






亭主関白でもなく、かかあ天下でもない須和家。

だけどアットホームで思いやりに溢れた、なかなか素敵な家だった。


セカセカ動き回る梢と、無駄なことはせずにゆっくり動く柊平。
あれはあれで、正反対に見えて相性がいいんだと思わざるを得ない2人だった。


俺もいつか愛里ちゃんとそうなればいいなぁ、なんて思いながらその日を終えたのでした。









おまけ その1

高槻優斗の突撃!須和家の日曜日

おしまい。