「だって、好きだったんですよね?」


そう言うと、社長は驚いた顔をする。

奈々さんが元カノだということを、まさか私が知っているとは思ってなかったんだろうな。


「…まあ、昔はな。だけど、あいつが結婚した時点で、俺の思いは断ち切ってあるんだよ。」

「でも離婚されたって。」

「聞いてたのか?」


またしても目を見開く社長に、申し訳ない気持ちになる。


聞いてました。ごめんなさい。


「…そしてその先は聞いてないのか。君は本当に間が悪いな。」


それでいきなり帰ったのか、と額に手を置いて溜め息をつく社長は、なんだかとても呆れた様子でいらっしゃる。