自分の身の振り方も決まらないまま、取り敢えず病室へと足を運ぶ。 パタパタと響く自分の足音。 あれ、それに混じって人の声がする。 女の人と男の人の声だ。 だんだんおばあさんの病室に近づくにつれて大きくなっていく声。 この声は、社長。と、奈々さん…? 「旦那とは離婚が成立したんよ。」 閑散とした廊下に、その一言が響く。 間違いない。これは、奈々さんの声だ。 さっき廊下で会ったときの一度しか聞いたことがないけど、分かる。