「失礼しまーす……」

小さな声で、ゆっくりドアを開けながら入った。


先生、いないのか……。



「猪原くん……?」

ベッドの方を見てみると、猪原くんがそこに眠っていた。


そっと髪の毛に触れた……。


「猪原くん……」


返ってこない返事。

それでも私は1人で話を続けた。



「猪原くん、私って迷惑、だよね……?」


「私、自分の“好き”を押しつけすぎてたよね」


「わかってるんだ……。だからね、今日で終わりだし、いい機会だから、もう猪原くんのこと、諦めようと………」



──グイッ!


「へ……? わっ!!」


私は、なにが起きたのか、理解できずにいた。