私はもう一度最初から弾いた。


「出だし、勢い足りねー。」


「そこ、肘から行かねーからおせーんだよ。」


「そこ走りすぎ。」


私が弾く度に注意をしてきて

私は言われた通りに弾くだけで

上達しているのが自分でもわかった。


「………ピアノ、好きなんだね。」


「俺は聴く専門。」


「でもすごいよ。

うまくいかないとこがこんなに簡単によくなるなんて…。」


「お前、独学だろ。」


「え?まぁ…。

昔はピアノ通ってたけどね。」


今はそこまで甘えられないから。


「指導者、つけねーの?

つーかそんだけ弾けてなんでこの学校なわけ?」


「うち、両親いないから。

そこまで甘えられないの。」


「………悪いこと聞いたな。」


「いーよ。」


私も本当は誰かに習いたいけどね…。