「そんな事口に出して言わなさそうにないのに……」
「うーん……そこは幼馴染みの特権かな。って言うより、私が無理矢理吐き出させたって言った方が正しいけどね」
「え、遥香さんが吐き出させた?」
あの十夜から!?
想像出来ない光景に目を真ん丸に見開く。
「今回だけじゃないよ。凛音ちゃんがお兄さん達と消えてしまった時も、獅鷹総長の妹だって知った時も、私達がドラッグストアで会った後も」
「……」
「十夜はずっと不安と闘ってた。色んな事を悩んで……悩んで悩んで悩み抜いて。
けど、それでも凛音ちゃんへの想いだけは変わらなかった」
「……っ」
知らなかった十夜の想いにもう涙を抑える事は出来なかった。
次々と迫り来る感情が涙へと姿を変えていく。
「……っ」
もう遥香さんに対しての遠慮だとかそんなのは考えられなかった。
頭の中には十夜に逢いたいだとか抱き締めたいだとか、そういう感情しか溢れてこない。
「……私は十夜ほど愛に餓えてる人はいないと思ってる。 両親と祖父母を早くに亡くし、父方の祖父には邪険に扱われる。私達は傍にいるけど、それでも孤独感は消えない。
だから“居場所”を求めたんだと思う。“鳳皇”という自分の居場所を」
居場所……。
「十夜の“優しさ”は十夜が“愛”を求めているから。だから仲間を愛し、大切にする」
「……っ」
「凛音ちゃん、凛音ちゃんは絶対十夜から離れないであげて。十夜の心の大半を占めているのは凛音ちゃんなの」
まるで訴えかける様に放たれる遥香さんの言葉の数々。
それは確かにあたしの心に響いた。


