Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】


「………」


遥香さんの言いたい事は分かる。

自分は駄目だったのにあたしは良いだなんて、そんなの納得がいかなくて当然だ。



「十夜、なんて言ったと思う?」


「なんてって……」


全然分からない。



「“自分の手で護りたいから”」


「………」


「“人に任せず、自分の手で護ってやりたい。一番近くで、自分の手でアイツを護ってやりたいんだ。

それに、アイツが目の届く所にいねぇと落ち着かねぇ。……いや、俺がアイツの傍にいたいだけか”」


「……っ」


「最後にね、言ってた。“離してやりたくてももう離してやれねぇから”」


……っ、十夜…。


十夜の口調まで再現してくれた遥香さんは最後の一言を告げた後、あたしの左肩にそっと右手を置き、微笑んだ。


それがあたしの感情を更に引き出す。



「十夜が返事を躊躇う筈だよね。私、その言葉を聞いて胸にポッカリ穴が開いちゃった」


「遥香、さん……」


込み上げてくる感情をどうしても押さきれない。


声を出して泣きたいけれど、あたしなんかよりも遥香さんの方が泣きたい筈。


それに、あたしの涙は嬉し涙。


遥香さんの前で嬉し涙なんか流せない。