「………」
遥香さんの言いたい事は分かる。
自分は駄目だったのにあたしは良いだなんて、そんなの納得がいかなくて当然だ。
「十夜、なんて言ったと思う?」
「なんてって……」
全然分からない。
「“自分の手で護りたいから”」
「………」
「“人に任せず、自分の手で護ってやりたい。一番近くで、自分の手でアイツを護ってやりたいんだ。
それに、アイツが目の届く所にいねぇと落ち着かねぇ。……いや、俺がアイツの傍にいたいだけか”」
「……っ」
「最後にね、言ってた。“離してやりたくてももう離してやれねぇから”」
……っ、十夜…。
十夜の口調まで再現してくれた遥香さんは最後の一言を告げた後、あたしの左肩にそっと右手を置き、微笑んだ。
それがあたしの感情を更に引き出す。
「十夜が返事を躊躇う筈だよね。私、その言葉を聞いて胸にポッカリ穴が開いちゃった」
「遥香、さん……」
込み上げてくる感情をどうしても押さきれない。
声を出して泣きたいけれど、あたしなんかよりも遥香さんの方が泣きたい筈。
それに、あたしの涙は嬉し涙。
遥香さんの前で嬉し涙なんか流せない。


