「ウチのお母さんと妹って性格似ててね、十夜は可哀想な事に押されまくりなの。妹なんて十夜に彼女が出来たって聞いた時十夜に泣きついてたのよ。まぁ十夜も妹に甘いんだけど」
「妹さん、おいくつなんですか?」
「小六。十夜にべったりで家に来い家に来いって煩いの。十夜が来る度凛音ちゃんの事聞き出して変に対抗心を燃やしてる」
馬鹿だよね、と言って苦笑し、肩を竦めて見せる遥香さん。
「あはははは……」
いや、うん。それ笑えないです。
「付き合ってる時もお母さんや妹に頻繁に呼び出されてたからデートっていうデートはした事がなかった」
デート……そう言えば充くんが言ってた。十夜はよく遥香さんの家に出入りしてたって。
それってこういう事だったんだ。
十夜の家庭事情を詳しく聞いたからこそ理解出来る真実。
十夜にとって遥香さんの家は実家と同じ。
帰って当たり前の場所なんだ。
「外でデートが出来ないのは付き合う前から分かってた。十夜と付き合えるのならそんなのどうだってよかったの」
「遥香さん……」
当時の事を思い出しているのだろうか。
遥香さんの表情は少し寂しそうで、少し泣きそうだった。
口ではそれでも良いと言っていても本心はきっと違うと思う。
人目を気にせず外でデートしたい。
それは誰もが思うこと。
遥香さんはそれをずっと我慢していたんだ。
素直に凄いと思う。
初めから一緒にいるあたしは物凄く幸せだったのだと、思い知った気がした。


