ちょ、ちょっと待って。一体どういう……。
「十夜ね、凛音ちゃんの話をする時だけ表情が優しくなるのよ」
「え?」
十夜が、あたしの話を?
「ウチに来た時ね、お父さんとお母さんと妹の質問攻めが凄くて、十夜いつも根掘り葉掘り聞かれてる」
「え!?お父さんとお母さんと妹!?」
しかも質問攻め!?
遥香さんにと思いきや、まさかのお父さんとお母さん。
それに、
「妹?」
遥香さんに妹がいるなんてそんなの全然知らなかった。
「え、ちょっと待って。まさか十夜あの時の事ちゃんと説明してないの?」
「え?説明?」
切れ長の瞳が最大限に開かれ、その後、はぁ、と深い溜め息を吐き出す遥香さん。
そんな遥香さんに反して意味が分からないとでも言う様にポケーッと間抜け面を晒すあたし。
「私と凛音ちゃん、前にドラッグストアで会ったじゃない?私が十夜といて、凛音ちゃんが弟さんと遊大くんといた……」
「……あ」
遥香さんが言ってるのは、あたしが引っ越しの準備をしに行った時のこと。
遥香さんはシャンプーコーナーで二人に会った、あの時。
「あの時ね、私達二人だけじゃなかったの」
「え?二人だけじゃなかった?」
「そう。お母さんと妹も一緒に来てたのよ。一緒に出歩いたら危ないからって十夜は断ったんだけどね、二人共呑気な性格だから全然聞かなくて。
凛音ちゃん絶対誤解してるだろうからちゃんと説明しておいてねって十夜に言っておいたんだけど……」
十夜説明してなかったんだ。ホント女心分かってないよね、と可愛らしく唇を尖らせた遥香さん。
……そ、そんなぁ~あんなにも悩んだのに。ショック……。


