Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】


ずっと、傍に……?

それって……。


「『私達付き合ってるから、だから十夜の事は心配しないで下さい』って」

「……っ」



“付き合っている”という言葉に過剰に反応した心はさっき遥香さんの言っていた言葉の意味を漸く理解した。



“私は付け込んだのよ。十夜の心に”



それは……。


「十夜に言ったの。『お婆様を安心させてあげよう。お婆様の前だけでいいから恋人になって』って」



──それは、十夜のお婆ちゃんへの想いに、お婆ちゃんを心配する十夜の心に付け込んだっていう意味だったんだ。



「十夜は少しの間悩んでいたけど、最終的にはそれを承諾してくれた」



十夜はきっと、物凄く悩んだに違いない。


お婆ちゃんは十夜にとってご両親の次に血の繋がりが強かった人。


ご両親がいない今、お婆ちゃんが唯一の十夜の心の拠り所だった。


そのお婆ちゃんが末期の肺ガンであと半年の命。


それを聞いた十夜はどんなに辛かっただろう。どんなに哀しかっただろう。


それはきっと、あたしが想像するよりも遥かに辛かったに違いない。



病気で苦しんでいる中、自分の事を心から心配してくれるお婆ちゃん。


それを見た十夜は悩んで悩んで悩んで悩み抜いた。


そして、決断を下したんだ。


自分が偽る事でお婆ちゃんが少しでも安心するのなら嘘をついても構わない。


きっとそう思ったんだと思う。