「そして、お爺様が亡くなった半年後、お婆様も倒れた」
そんな立て続けに?
「ここからが私達の“偽りの期間”の始まりだった」
「ここ、から……?」
って、どういう事……?
「私は付け込んだのよ。十夜の心に」
「付け、込んだ……?」
遥香さんから放たれる言葉が理解出来ない。
一体どういう事?
「私と十夜はね、よくお母さんのご両親の元へ遊びに行ってた。だから、お婆様が倒れてからも一緒にお見舞いに言ってたの」
「………」
「電車で二時間程掛かる所だったからそんなに頻繁には行けなかったけど、月に三、四回はお見舞いに行ってた。
十夜のお婆様はね、十夜を引き取れなかった事を悔やんでいたわ。自分がこんな身体じゃなければってお見舞いに行く度十夜に謝ってた」
「………」
十夜のお婆ちゃんはずっと後悔していたんだ。
十夜を引き取れなかった事をずっと後悔してた。
「……お婆様は肺ガンだったの。倒れた時にはもう手遅れで、半年も持たないって言われてた」
「肺、ガン……」
「お婆様は十夜を残して逝く事だけが心残りだって何度も何度も言ってた。だからね、私言ったの。『私がずっと十夜の傍にいます』って」


