ぽつりぽつりと静かに落とされる十夜の哀しい過去。
両親に先立たれ、お爺ちゃんに認めて貰えずに生きてきた十夜の哀しい過去。
「十夜の家はね、うちの隣なの」
「えっ!?」
「この前送ってくれたよね?あの右隣が十夜の家」
う、そ……。
近くにあるかなとは思っていたけど、まさか隣だなんてそんなの思いもしなかった。
「うちに預かると言っても十夜はご飯を食べに来るだけだったわ。どんなに寂しくてもご両親と過ごした家から離れる事はなかった」
「………」
「泣き言の一つも言わず、毎日毎日誰もいない家へと帰っていく。私はそれを見るのが辛かった」
遥香さん……。
「十夜の生活に変化が訪れたのはそれから半年後の春。 中学校での出会いだった」
「中学?」
「そう。出会ったのよ。大切な仲間に」
大切な、仲間?
「それってもしかして……」
「煌と壱くん。彼等に出会ったのは五年前の春だったの」
一変した遥香さんの表情は心から安心しきった様なそんな表情で、本当に十夜の事を心配していたんだと感じられた。
「二人と友達になって十夜は凄く楽しそうだった」
「………」
「でもね、そんな十夜にまた哀しい出来事が起きたの」
「哀しい出来事?」
「そう。母方のお爺様が亡くなった」
「お爺ちゃんが、亡くなった……?」


