「私達が修学旅行に行ってる時にね、二人も旅行に行ってたの。その旅先で事故に遭った。トラックの居眠り運転。正面衝突で二人は即死だったわ」
「……っ、」
……即、死。
両親の突然の死。
その知らせを受けた時、十夜は一体どんな気持ちだったのだろう。
きっとすぐには信じられなかったと思う。
だって、今まで一番近くにいた人達が突然いなくなったんだ。信じられる訳がない。
「お通夜の日、お爺様は欠席するって言ってたの」
「なっ……!?」
息子が亡くなったのに欠席!?
そんな……。
「出席したのはお婆様と叔父様達が説得したから……と言いたいけど違う。お爺様は会社の為に、世間体の為に出席をしたの」
「会社の、為に?」
「そう。これはお爺様の口から直接聞いたから間違いないわ」
「そんな……」
酷い。いくら自分の思い通りにならなかったからって実の子供をそこまで蔑ろにするなんて。
「その言葉を、十夜も聞いてしまった」
「……え、十夜も?」
まるで自分が其処にいた様な感覚に陥って、くらり、目眩がする。
「その言葉を聞くまでは期待していたのかもしれない。父親は愛されてたって。そして、両親が居なくなった今、自分も愛してくれるって。十夜は一縷の望みを抱いていたのかもしれない」
「……っ、十夜……」
じわりと視界を遮っていく涙。
膝の上で握り締めていた両手はカタカタと小刻みに震え、何とかそれを抑えようとしたが手に力が入らなかった。
言い表せない程の感情がひしめき合い、それは胸中で消化されずに留まる。
「あの時の十夜の表情は今でも忘れられない。絶望と困惑、そして、何もかも諦めたあの表情を」


