Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】


「ある理由?」

「そう。政略結婚」

「政略……」



“政略結婚”


それは馬鹿なあたしも良く知る言葉。

ドラマや漫画でよく目にする言葉。


それが……?



「お爺様は自分の子供達全員にその政略結婚をさせたの」


「ぜ、全員?」


「そう。自分の欲望の為に、会社を大きくしたいが為に自分の子供に政略結婚をさせた。

十夜のお父さんもその政略結婚をさせられた内の一人よ」


十夜のお父さんも?


「ううん。させられた、というよりさせられそうになったっていう方が正しいかな」


させられた……それってつまりしなかったって事?


首を捻りると遥香さんはゆっくりと視線を滑らせ、数回瞬きを繰り返した後宙を見つめた。



「十夜のお父さんは長男だったの。即ち、蒼井家の跡取りでAOIグループを継ぐ人。だから、他の誰よりも早くお見合い話を持ち掛けられたわ」


「……」


「でも、その時にはもう十夜のお父さんには恋人がいた」


「恋人……」


「それが十夜のお母さん」


……え?じゃあ二人は結婚したの?



「駆け落ちしたの」


「駆け落ち……?」


「そう。十夜のお父さんはお爺様に恋人であるお母さんを紹介してお見合いを断ろうとした。

けど、お爺様はそれを無視し、十夜のお父さんに無理矢理お見合いをさせたの」


「そんな……」


無理矢理だなんてそんなの酷い。


十夜のお父さんには十夜のお母さんっていう恋人がいるのに。