遥香さんから紡がれたのは十夜との始まり。
それは充くんが話してくれた通りの内容で、これから始まる二人の歴史にゴクリ、と唾を飲み込み、続きを聞く覚悟を決めた。
「凛音ちゃん、実はね、私達はそれよりも前から付き合っていたの」
「……え?」
それよりも前って……一体どういう……。
「私達が付き合い始めたのは春よりも前、今から二年前の夏よ」
「えっ、二年前の夏!?」
「そう。二年前の夏から春。それが私達の偽りの期間だった」
偽りの、期間……?
遥香さんから淡々と告げられる新事実に、驚きが隠せない。
まさか二人が更に半年も前から付き合っていたなんて。
しかも始めの半年間が“偽りの期間”……?
次々と告げられる新事実にあたしの脳内は早くもパンク寸前で。
一つずつちゃんと理解していかないとゴチャゴチャになりそうだった。
「これは十夜の家族、ううん、私達“蒼井家”が深く関係してるの」
「蒼井、家?」
「そう。その蒼井家はAOIグループの直系。
AOIグループは有名とまではいかないけど、結構名の知れた企業なの。私はその一族の直系にあたる人間」
AOI、グループ?遥香さんが一族の直系?
普段余り聞かないその言葉に、頭の中で疑問符が飛び交う。
「蒼井 宗次郎。AOIグループの創業者で私のお爺様。ううん、私と十夜のお爺様って言った方が解りやすいかな」
「えっ!?」
AOIグループの創業者が遥香さんのお爺ちゃん?っていうか十夜のお爺ちゃん!?
……って、ちょっと待って。それってまさか……。
「そう。凛音ちゃんの思ってる通りよ。
私と十夜は血が繋がってるの。って言ってもイトコだからそこまで濃くはないんだけどね」


