「凛音ちゃんは私と十夜が付き合っていた事、知ってるんだよね?」
「……っ、」
いきなり切り出された本題にドクンと心臓が飛び跳ねる。
「……はい」
ぎゅっと胸元を押さえながらそう返事をすると、遥香さんは「そっか…」と困った様に小さく笑みを零した。
遥香さんはスッと視線を逸らした後、自分の手を見つめながらポツリ、言葉を落とす。
「ねぇ、凛音ちゃん。恋人ってどこからが恋人だと思う?」
「……え?」
遥香さんのその言葉に口から出たのは間抜けな声。
だって、遥香さんの言った言葉の意味が分からなかったから。
どこからが恋人って……。
「手を繋いだ時から?キスをした時から?それとも“付き合う”と口にした時から?」
「………」
自嘲気味に言葉を吐き出す遥香さん。
そんな遥香さんにあたしは何も応えられなかった。
「もし、“付き合う”と言った時からだとしたら、私達は間違いなく付き合ってた」
「……っ」
やっぱり……。
「でも、半分は偽りだった」
……え?半分は偽り?
思いがけない言葉に目が最大限に見開かれる。
遥香さんは当時を思い出しているのか、目を瞑り、「ふぅ」と大きく息を吐き出した。
「私と十夜が付き合いだしたのは、一年半前の春」
「………」
「そして、別れたのはそれから半年後の夏だった」


