「私、十夜には誰よりも幸せになって欲しいと思ってるの」
「………」
「だから、凛音ちゃんの本心を直接聞きたかった。聞いて誓って欲しかったの」
そう言った遥香さんの瞳は今まで見た事がないぐらい真剣な瞳だった。
揺らぎ無いその真っ直ぐな瞳は、心の底からそう願っているとそう告げている様な気がして。
「……あたしは、十夜が好きです。これからもずっと。一生離れるつもりはありません」
気付けばもう一度そう遥香さんに誓っていた。
そんなあたしの言葉に遥香さんは嬉しそうに微笑む。
「十夜が好きになった人だもん、良い子だって分かってた。でも、凛音ちゃんの口から直接聞きたかったの。
それを覚えていて欲しかった。……もう十夜に哀しい思いをして欲しくないから」
「……遥香さん?」
「凛音ちゃん、私はもう十夜の事はとっくの前に諦めてるの」
「とっくの前に……?」
「そう。だから、十夜の家族として貴女に言ってもいい?」
「……っ、はい」
「十夜を哀しませないであげて。十夜を幸せにしてあげて欲しいの」
「遥香さ──」
「これは凛音ちゃんにしか出来ない事よ。私じゃ駄目だった」
遥香さんじゃ駄目だった……?
そっと伏せる瞳から感じ取れた遥香さんの哀しみ。
それは言葉では言い表せない程哀しげに見えて。
“私じゃ駄目だった”
それが十夜と遥香さんの別れた原因に関係しているのだと思った。


