Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】


「……え?あの……」


あまりにも突然すぎて何を言われたのか理解出来なくて。


何とか理解しようと遥香さんの顔を窺えば、遥香さんはさっきと変わらず可愛らしい笑顔であたしを見ていた。


……え、あたし、幻聴でも聞いた?


そう現実逃避したくなる程にこやかな笑顔な遥香さん。


けど、そんな都合のいい解釈は次の言葉によって掻き消されてしまった。



「私、家族と同じぐらい十夜を愛してるの」


「……っ、」


「十夜は私にとってかけがえのない存在」


「………」


「凛音ちゃんにとって十夜はどういう存在?」



そうあたしに問い掛けた遥香さんは笑ってなんかいなかった。


ううん。笑ってはいる。

けど、目が笑っていない。


可愛らしい微笑みの裏に見え隠れするあたしへの敵意。


それは初めて見せた遥香さんの本心だった。



コクリ、喉奥が鳴る。


情けない事に遥香さんから感じる妙な威圧感に呑まれてしまい、何も言葉が出てこなかった。


室内に漂う不穏な空気が更にそれを助長して、口を強く結ぶ事しか出来ない。



遥香さんの偽りの笑顔が、

敵意剥き出しの瞳が、

十夜への強い愛情が、

あたしに訴えている。



“私の方が十夜を愛している”と。

“貴女よりも私の方が十夜を愛している”と。


そう訴えていた。