「待ってる間、私達の事を話しててもいい?」
「それは……」
「十夜から話すよりも私から話した方が説明しやすいと思うの。それに、凛音ちゃんと二人で話したい事もあるし」
……二人で、話したい事?
「ね、良いでしょ?話すのは私達の繋がりだけよ。あとは十夜から話してあげて」
「……分かった」
遥香さんに押し切られ、渋々承諾した十夜。
「凛音、また後で俺からも話すから」
「う、うん……」
遥香さんからあたしに視線を移した十夜はそれだけ言うと不安げに瞳を揺らし、浮かない表情でリビングから出て行った。
パタン、と静かに木霊する扉の音。
男気が無くなったせいか室内が妙に寂しく感じる。
そう感じるのはきっと遥香さんとの間に流れるこの気まずい空気のせいだろう。
それにしても、まさか遥香さんと二人っきりになるなんて思ってもいなかった。
ある意味、十夜と二人でいるよりも緊張するかもしれない。
……遥香さんの話って一体なんだろう。
いや、十夜の事って分かっているんだけどね。
さっきの言い方がちょっと意味深だったから。
「凛音ちゃん?」
「は、はいっ!」
「……ふふっ。そんな驚かなくても」
飛び上がったあたしを見てクスクスと肩を揺らす遥香さん。
上品というか何というか、女のあたしから見ても思わず見とれてしまう程の可愛さ。
見れば見る程敵わないと思ってしまうのは仕方無い事だと思う。
「凛音ちゃん」
──まさかその笑顔の後、
「私ね、十夜の事が好きなの。小さい頃からずっと」
遥香さんの口から十夜への愛の言葉が語られるなんて思ってもいなかった。


