「うっせぇ。割れたぐらいで発狂すんなよバーカ」
「バッ……!」
馬鹿だと!?人様のチョコを割っといて何だその言い様は!!
「ちょっと言い逃げする気!?」
しれっとした顔でソファーから立ち上がる煌に逃がすまいと直ぐ様食らい付く。
すると、
「お前はそうやって吼えてるぐらいが丁度良いんだよ。下ばっか見てんな」
あたしの頭をベシッと叩いた煌はベーッと舌を出し、玄関の方へ歩いて行った。
「は?え?ちょ、煌!?」
意味が分からずあたふた。
「凛音ちゃん、煌はいつもの凛音ちゃんでいて欲しいって言ってるんだと思うよ」
あたし達のやり取りを見ていたのか、壱さんがクスクスと笑みを零しながらそう教えてくれる。
「そうそう。りっちゃんはずっと笑ってなきゃな。沈んでんのはりっちゃんらしくないし」
「……壱さん…、彼方……」
ニッと笑う二人にさっきよりも熱くなる胸。
「凛音、気合いに一発彼方殴ってもいいぞ!」
「は?何でそうなるんだよ!」
「えー、だって彼方はいつもの凛音が良いんだろ?それって殴られたいって事じゃんか」
「ちょ、なんでそこまで話が飛躍するんだよ!」
「もう喜ぶなってー。な?優音もそう思うだろ?」
「コラコラコラ、優ちんそこで頷くな」
「……優ちん言うな」
あのー、あたし置いてけぼりなんですが。
優音まで巻き込んでワイワイと喋り始めた三人。
放置されたあたしは会話に加われずただ見ているだけで。
それだけならまだしも、四人は喋りながらソファーから立ち上がり、「じゃ、凛音また後でな!」と軽い挨拶をして玄関へ行ってしまった。


