「……で、お前のその口元の傷はいつやられた?」
頭上から降り注ぐ問い掛けにギクリと嫌な音を立てる心臓。
「こ、れは……最後?逃げるDを追い掛けて返り討ちにあったというか……」
「……追い掛けて返り討ち?」
ひ、ヒィィィィ……!
優しい声色は何処へやら。
一変したその声色に直ぐ様十夜から離れたいという衝動に駆られたあたし。
十夜だけじゃない。
「りぃ~のぉ~。テッメェは何でそう無茶ばっかりするんだよ!!」
「ご、ごめんー!!だってあの時は必死だったんだもん!ね、優音!……って優音!?」
何で無視するの!?優音は分かってくれるでしょ!?
何故か我関せずとでも言う様にそっぽを向いている優音サン。
優音が味方してくれなきゃあたし一人になっちゃうじゃん!!
「凛音」
「……はい」
「頼むから自分を大事にしろ」
「……っ」
またもや一変した十夜の声色。
その声色は心の底から心配してくれているのが分かる程真剣で、騒いでいた感情が自然と引き締まっていく。
「皆お前が大事なんだ。特に優音は誰よりもお前に近い。傷付けられている所を見て悔しくない訳がないだろ?」
「……うん」
十夜の言う通りだ。
もしあの時、あたしと優音が反対の立場だったとしたら、あたしはきっと正気じゃいられなかっただろう。
優音の傷付くところなんて絶対見たくない。
「……優音、ごめんね。心配かけてごめん。皆も、ごめんなさい」
優音だけじゃなく皆にも謝った。
毎回毎回同じ心配ばかりかけて、ホントあたしって学習能力ゼロだ。


