獅鷹へ行く道中であたしが“D”の幹部、“カイ”を目撃した事。
もしかしたらアジトへ行くかもしれない。そう思って奴等を尾行した事。
そのアジトは繁華街の外れにある錆びれたビルの中にあって、トップがいるかどうか分からないと思ったあたし達は取り敢えず獅鷹と鳳皇に知らせようとした。
丁度その時、ビルの前に“ある人物”が来て、
それが充くんの友達、智広(トモヒロ)くんだった事。
「智広!?アイツが!?」
「じゃあ……」
智広くんの正体を察したのか、珍しく表情が強張らせた壱さん。
「……そう。智広くんは“D”のスパイだったの」
「スパイ!?」
「やっぱり……」
驚愕の表所を浮かべる陽に反して難しい表情で何かを考え込んでいる壱さん。
十夜はと言うと、壱さんと同様何かを考えている様だった。
けれどその表情は普段と変わらず無に近い。
「ちょっと待てよ。じゃあ、アイツを連れて来た充は……」
「煌、充くんはそんな事しない!」
煌の一言に直ぐ様立ち上がり、感情を露にした遥香さん。
遥香さんが怒るのも無理はない。
充くんは遥香さんにとって気を許せるかけがえのない人。
そんな彼をスパイ扱いされたら怒るのは当たり前だ。
それに、遥香さんの気持ち、あたしにも分かる。
智広くんがスパイだと分かった時、あたしもショックだったから。
あたしであれだけショックを受けたんだ。
今の遥香さんはそれ以上のショックを受けているだろう。
「遥香さん、煌、それについてはまだ続きがあるの」
だから、遥香さんの為にも早く真実を話してあげないといけない。


