足を洗い、十夜が持ってきてくれたスウェットに着替えてリビングへと戻ると、扉を開けるなり陽が飛びついてきた。
「ちょ、陽、どうしたの!?」
足を踏ん張り、体勢を整えながらそう問い掛けると、
「帰って来ないかと思った」
陽から零されたのは、泣きそうな程弱々しい言葉。
その声色に眉を寄せると、首に巻き付いた腕の力が少しだけ強まった。
「帰って来なかったらどうしようって、俺……」
「陽……」
「……ごめん。ごめん凛音」
「なんで、なんで陽が謝るの?」
あたしが勝手に出ていったのに。
あたしが勝手に嫉妬して出ていったのに。
陽は何も悪くないよ。
だから陽が謝る必要なんてない。
「俺、凛音に──」
「陽」
「……っ」
陽の言葉を遮った煌が「取り敢えず座れ」とソファーへ座る様促す。
煌の言葉を聞いた陽は少し間を置いた後、あたしから離れ右手を引いた。
連れて行かれたのは二人掛けソファーの右側。
ソファーの左側には既に十夜が座っていて、近寄っていくと座れと言わんばかりに左手首を引っ張られた。
左側のソファーには左から煌、遥香さん、彼方。
右側のソファーには右から優音、陽、壱さん。
ソファーへ座ると、斜め前にいた優音に「大丈夫か?」と聞かれ、その問い掛けにコクンと頷くと優音は皆へと視線を移し、“D”と対面した時の事を説明し始めた。


