ポロリと零れ落ちた言葉に十夜の顔が険しく歪んだ。
「Dに、聞いた……?」
「お前、Dと会ったのか!?」
十夜の言葉を阻む様に詰め寄ってきたのは煌。
その表情は十夜よりも険しく、恐ろしい。
「何処で会った!?それ、Dにやられたのか!?」
「いっ゙!!」
煌に右肩を掴まれた瞬間、ズキッと走った鋭い痛み。
その痛みに両肩がビクンと跳ね上がった。
いったぁ……。
激痛が走ったところをみるとどうやらシンに突き飛ばされた時に右肩を痛めていたらしい。
そう言えばあの時、ビルに思いっきり突き飛ばされたんだっけ。
「煌、十夜、今すぐ凛音ちゃんから手を離してあげて」
呑気にあの時の事を思い出していると、背後から聞こえてきたのは女の人の声。
その声に振り返ると、真後ろにいたのは遥香さんと優音の二人で。
「なんで……」
何とも異様な組み合わせに思わず首を傾げた。
「ちょうど階段の下で鉢合わせしたから一緒に来たの」
苦笑混じりに微笑んだ遥香さんは相変わらず可愛いくて。
その笑顔を見るだけでチクリと胸が痛む。
「あ……すみません、道塞いじゃって」
今頃気付いた馬鹿なあたし。
此処に来たって事は当然部屋の中に入るって事だ。
玄関のど真ん中に突っ立ってちゃ入ろうにも入れないじゃない。
胸元の服をギュッと強く握り締めながらそそくさと端の方へ避けると、
「いいの。私入らないから」
何故か首を横に振った遥香さん。
「入らない……?」
どういう意味?
此処に来たのに中に入らないの?
言葉の意味が解らなくて、頭の中が疑問符だらけになる。