「お前……凛音か?」


信じられないとでも言うように瞬きを繰り返している煌。


ううん、煌だけじゃない。

みんな物凄く驚いた顔であたしを見ている。


当然だと思う。

突然帰って来たと思ったらこんなボロボロの格好をしてるのだから。

驚かない方がオカシイ。




「凛音、その格好どうした!?何があった!?」


意外な事に一番早く駆け寄って来てくれたのは十夜だった。


心配そうにあたしの瞳を覗き込み、左頬にそっと手を添える。


「……っ」



指先が触れた瞬間、ピリッと頬に走った小さな痛み。


思いがけない痛さに目を瞑ると、十夜は髪を掻き分け、そっと左耳を覆った。


「何があった?」


再度落とされた問い掛けは指先と同様微かに震えていて。


そっと目を開けて見上げれば、心配そうに揺れる双眸と目が合った。


十夜の背後では皆が心配そうにあたしを見ている。



「……どうして“D”が鳳皇の元傘下だったって事あたしに隠してたの?」


「……っ」



口から力無く零れ落ちた言葉。


その言葉に十夜の瞳が勢いよく見開かれる。


それと同時に、漆黒の瞳に今までとは比にならないぐらいの動揺が走り抜けた。


それは十夜だけじゃなく、後ろにいる皆にも言える事で。


「お前、何処でそれを聞いたっ!?」


耳を覆っていた十夜の手があたしの肩を荒々しく掴み、前後に激しく揺らす。


尋常ではないその動揺ぶりに問い掛けたあたしの方が驚いた。



……なんでそんなに動揺するの?

やっぱり何かあるの?


皆の尋常じゃない表情に言い様のない不安が込み上げる。



「──“D”に聞いた」