怪訝な顔の鳳皇メンバーをすり抜け、決して上品とは言えない足取りで階段を駆け上がる。


何時もの如く、下から「凛音ちゃん危ない!」とのお声を頂いたけれど止まる事はなかった。


“D”と喧嘩したせいで体力が無くなったのか、階段を上がるだけでもしんどい。



「……っ、はぁ、はぁっ……」


手摺りに頼りながら何とか無事に二階へ辿り着き、そのまま止まる事なくリビングへと走っていく。


この部屋を去った時の事を考えるとそんな軽々しく入ってはいけない。


きっとこんな状況でなければ扉を開けるのを躊躇っていただろう。


けれど、この時のあたしには躊躇いなど一切無かった。


扉の前に着くや否や勢い良くドアノブを掴み、右に回す。




「……え?」


ドアノブを引いた次の瞬間、視界に飛び込んできたのは見知った人達の驚いた顔。


みんな突然開いた扉に驚いているのか目を最大限に見開いている。


ソファーに座っている陽、彼方、煌はポカンと口を開けていて、キッチンに立っていた壱さんはコップとペットボトルを持ったまま固まっていた。


十夜はいつもの様に特等席に深く腰掛けている。



あたしは全員と視線を合わせた後、



「皆に聞きたい事があるの」



震える唇でそう問いかけた。