-客観的視点-


凛音の元から去った後、大通りに駐車してあったワゴン車へと乗り込んだD幹部達。


五人が向かうのは凛音の推測通り、十夜達の知らないアジト。


「──シン、最後東條 凛音と何話してたんだ?」


フードを被っていた男がゆったりと座席に腰掛けながらシンに向かってそう問い掛ける。


「あぁ、教えてやったんだよ。鳳皇が俺達の“正体”を知ってるって事を」


「ちょ、お前、それ言っても大丈夫なのかよ!?」


シンの言葉にギョッと目を見開いたカイが慌てて振り返り、座席から身を乗り出す。


そんなカイにシンは余裕の笑みを浮かべると、取り出した煙草に火をつけ、口にくわえた。


「もし東條 凛音が奴等に理由を聞いたとしても奴等は絶対に言わねぇよ。言ったら“河原の件”がバレるからな」


余裕綽々とはこの姿の事を言うのだろうか。


見せ付ける様に吐き出された紫煙と緩やかに上げられた口端。


それはこの状況を心の底から愉しんでいる様に見えた。




「──シン、なんで東條 凛音を殴った?」


そんなシンに反して無表情を貫き通すフードの男。


男は自分から問い掛けたにも関わらず前方を真っ直ぐ見据えたままで。


シン以上に異質な雰囲気を放つその男に車内の空気がピンッと張り詰めた。


だが、シンはそんな空気を気にも留めずに再び笑みを零す。



「宣戦布告だよ。ボロボロの東條 凛音を見ればアイツ等の戦意が上がる。上がれば上がる程堕ちた時のショックは大きくなるだろう?」


「………」


「俺はただ奴等の苦しむ顔を見たいだけだ」