甘すぎるその囁きは脳天に響いて、一瞬にして頭の中が十夜だけになってしまった。


意識してしまうともう何もかもダメで。

あたしに触れている大きな手にも、
未だに耳に感じる微かな吐息にも、


「凛音……」


甘く紡がれる十夜の声にも。


十夜の全てに神経が集中して、もう堪らない気持ちになる。





「フッ。心臓の音すげぇ」

「……っ、仕方ないでしょ!」



なんでそうなったか分かってるくせに!
ほんと意地悪なんだから!



「お前だけじゃねぇよ」

「へ?……わっ!」



予告もなく後ろへと倒れたもんだから、ビックリして素っ頓狂な声が出た。



「ちょ、十夜、肋骨ひび入ってるのに!」

「これぐらい我慢出来る」

「でも、」

「いいから」

「っ」



仰向けだったのを抱き直されて、向かい合うように抱き締められる。



「あ……」

「お前と同じだろ」



うつ伏せになって分かった、十夜の心臓の音。


「……ほんとだ。速い」


トクトクと波打つ鼓動は、確かにあたしと同じでいつもより速い。



「十夜もあたしにドキドキしてるんだ」