「今日は離してやれねぇから」
「……うん」
離さなくてもいいよ、なんて口に出さなくても通じてる。言葉の代わりに抱き締め返したから。
そうしたら十夜も抱き締め返してくれて、少しの間会話もせずにその状態のままでいた。
「……遥香さんに聞いたよ。付き合ってた理由」
会話を切り出したのは、あたしから。
十夜の胸に顔を埋めたまま、遥香さんが話してくれたことを一つずつ丁寧に十夜に伝えていく。
遥香さんと十夜が付き合い始めたのは二年前で、それに十夜のおばあちゃんが関わっていたこと。
十夜が白狼の倉庫でリンと出会った時のこと。
あたしがリンだと知った時、どれほど十夜が悩んでたかってこと。
──そして、あたしと一緒に居る為に真実を自分の中に閉じ込める決意をした時のこと。
「……お前を迎えに行こうと決めた時、絶対に誰にも言わないと決めた」
「………」
「知られたら一緒に居られない。……否、お前が離れていくと思った」
「十夜……」
合間合間に告げられる十夜の言葉は、遥香さんに聞くよりもずっと深く、そして哀しくて辛いもので。
言葉と一緒に吐き出される小さな吐息に、胸が何度も何度も鈍い音を立てる。


