「あんなに酔い潰れて──って、わっ!?」
急に腕を引かれて、身体が反転した。
え?と思った時にはもう十夜の腕の中にいて、大好きな匂いが鼻孔を擽る。
「……十夜?」
「後悔した」
「え?」
後悔……?
「抗争の前にDの事話さなかったこと」
「………」
耳元で震えるその声に、あたしは何も応えられなかった。
十夜の言葉を聞いて思い出したから。
“十夜はずっと悩んでた”
──あの時聞いた、遥香さんの言葉を。
「……十夜、もう自分を責めないでよ。十夜はあたしに打ち明けようとしてくれてた。タイミングが悪かっただけだよ」
「でも、」
「あたしの為にいっぱい悩んでくれたんでしょ?貴兄が獅鷹獅鷹総長だって気付いた時からずっとずっと悩んでくれてた」
「……っ、遥香に聞いたのか?」
「うん。全部聞いた。あたしが獅鷹総長の妹だって気付いてた事も、それで悩んでた事も」
「………」
「十夜に苦しい思いいっぱいさせたよね。ごめんね」
「凛音……」
「ありがとう。ごめん。本当にごめんね。傷付けて本当にごめんなさい」
抱き締めたまま服の上からそっと指先で触れたのは、あたしが傷付けてしまった脇腹の傷。
完全に治っているのは分かっているけど、それでも怖くて強くは触れない。


