「いい。座ってろ」


立ち上がろうとするあたしを、首を横に振って制止する遊大。



「……ごめん。ごめんな、凛音」



そっとあたしの前に腰を下ろした遊大は今にも泣き出しそうな顔をしていて。


「……っ」


いつも笑顔だから、そんな顔を見ると余計に胸が締め付けられる。



「なんで……なんで遊大が謝るの?謝るのはあたしの方だよ!……ごめん、ごめんね」



遊大が謝る必要なんてどこにもないのに。

こうなったのは全部自分のせいなんだから。



鳳皇と関わった事も、それを獅鷹に隠した事も。


──そして、白狼の元へ乗り込んで行った事も。


全部全部、自分のせい。自分が招いた事。


遊大は何も悪くない。



「傷付けて、ごめんね。あたしの為に辛い思いさせてごめん」



遊大は真実を言えなかったんだ。


あたしの“気持ち”を知っていたから。

十夜が好きな事を知っていたから。


だから白狼の事を言わなかった。


あたしの、為に。




「……凛音、bladeとの抗争の時時人さんが言った言葉覚えてるか?」

「bladeの抗争の時?」

「あぁ。──“鳳皇に行って凛音がずっと笑顔でいられるのなら僕達はそれでいい”」

「……っ、それ……」

「思い出したか?」

「……うん」



嬉しかったから覚えてる。


あの時はただ単に遊大が皆を説得してくれたからだと思ってたけど、今回の抗争でそんな単純なものではなかった事を知った。


鳳皇と獅鷹が敵対してたのは白狼との事があったから。


その中心にいたのは遊大で。

遊大が貴兄達を説得しなければ鳳皇との和解はなかった。