ねぇ、なんでここに居ないの?
どこに行ったの?
呼ぶだけじゃなくて傍に来てよ。
一緒に居て。
──ねぇ、皆、どこに居るの?
ねぇ、
十夜、どこに居るの?
ねぇ……
そう心の中で問いかけた時、指先に何か触れた気がした。
けど、今のあたしにはそれを確認する気力は残ってなくて、触れられた指先さえ動かせない。
……何だろう。
今の今まで寂しくなんてなかったのに急に寂しくなってきた。
水の冷たさなんて少しも感じなかったのに……。
……怖い。怖いよ。
ねぇ、誰かあたしの名前を呼んで。
傍に来てよ。
誰か……
そう切願した時、今度は指先じゃなくて手首に違和感を感じた。
何?と思った時にはもう抱き締められていて。
──感覚がなかった唇に、そっと熱が灯った。


