……あぁ、あたし、死ぬのかもしれない。
薄れていく意識の中で真っ先に思ったのはそれだった。
目を閉じたら駄目だって分かっているのに、徐々に暗くなっていく視界のせいで自然と目が閉じていく。
十夜……
海水の冷たさなんてもう微塵も感じない。
まるで何かに纏われているような不思議な感覚に覆われて、恐怖なんて言葉は頭の片隅にも浮かんでこない。
寧ろ水中から見る水面が綺麗で、ずっと眺めていたいと思った。
少しずつ、少しずつ。
キラキラと波打つ水面から遠ざかっていく様を薄目で眺める。
もう、動きたくない。
このまま流れに身を委ねていたい。
そう思ってしまうほど水の中は心地良くて。
そっと目を閉じ、手足の力を抜いた。
真っ暗になった視界。
けど、不思議と寂しさは感じなかった。
それはきっと、頭の中で皆の声が聞こえているから。
“凛音”
“凛音ちゃん”
“りっちゃん”
“凛音さん”
“リン”
色々な呼び方であたしを呼んでくれる皆。
その時、ふと思った。
なんで皆は此処に居ないんだろうって。


