「クッ……」
三方からの息苦しい程の圧迫感に押されて、シンがまた一歩後ろへと下がる。
けど、距離は数センチも変わってなくて。
チラッと横目で確認すれば、直ぐそこに海が迫っていた。あと一歩でも下がれば確実に海にドボンだ。
けど、そんな切羽詰まった状況でもシンの強がりは消えない。
「ハッ。そんなにこのクソ女が大事かよ。───だったら、この女の為に鳳皇捨てられるよなぁ?」
鳥肌が立つ程ねっとりとしたその口調にぞわりと肌が泡立った。
密着してるから余計に気持ち悪く感じて、少しでもいいから離れようと身を捩る。
と、その時、突然目の前に現れたスタンガン。
それを捉えた瞬間、ビクッと身体が強張った。
「っ、」
スタンガンの痛さを知っているだけに下手に動けなくて、スタンガンを見つめたまま下唇を噛み締める。
「テメェ……」
スタンガンの先を焦らすようにあたしの顔に近付けてくるシン。
顔面は流石に怖すぎて、背けたくないのに背けてしまう。
「──さぁ、どうする?選べよ。鳳皇か、この女か」
この状況でこの物言い。
怖いもの知らずなのかただの馬鹿なのか。
あたしが人質になってるから優位に立ってると思ってるんだろうけど、それは大間違いだ。
シンはもう、どうやっても鳳皇には勝てない。
ううん、あたしが勝たせない。
あたしの存在が十夜の重荷になってるのなら、それを無くせばいいだけ。


