「凛音ちゃん、紐は解くけどジッとしててね」
「っ、なんでっ!?」
手足さえ縛れてなきゃあたしだって戦える。
メンバー達が身を削りながら戦っているのにジッとなんてしてられないよ!
「慧くん!あたし──」
「お前が出てくとややこしい事になんのが分かんねぇのかよ。馬鹿凛音」
「い゛っ!」
痛いんですけど!!
頭を叩かれただけなら未だしもデコピンまでされて。それがまた馬鹿力だから痛いのなんのって。
「筋肉馬鹿!!」
いつも思うけど、嵐ちゃんってあたしのこと絶対女だと思ってないよね!自分がどれだけ馬鹿力なのかいい加減自覚してよ!
「り、凛音、取り敢えず紐解くね」
「……ありがと、時人くん」
威嚇し合うあたしと嵐ちゃんに間に恐る恐る割って入ってきた時人くんが、自由を奪っていた手足のロープをゆっくりと解いてくれる。
その間、あたしと嵐ちゃんの睨み合いは続いていたけど、あたし達の性格を知り尽くしている時人くんは止めようとはせず、ただ間に挟まれながらロープを解いていた。
この場で唯一止められる可能性があるのはあたしを抱っこしている慧くんだけだけど、黙ってる所を見るとどうやらどう対処すればいいのか迷っているらしい。
そんな慧くんに助け舟を出せるのは……
「──お前等、こんな時に何喧嘩してんだよ」
もちろんこの人しかいない。
「貴兄!」
振り向けば、地面に倒れている数人の男達を背に貴兄と優音が歩いてきていて、
「貴」
その姿を見るなり慧くんがホッと安堵の溜め息を吐き出した。
ここまで重い溜め息を聞くと何だか申し訳なくなってきて、心の中でごめんなさいと謝りながらもう一度元凶である嵐ちゃんを睨み付ける。


