「嵐!乱暴にするなっていつも言ってるだろ!」
「あーはいはい。悪かったって。ホラ早く行けよ」
「お前な──」
「慧!」
反省の色すら見せない嵐ちゃんに慧くんが珍しく噛み付こうとした時、これまた聞き覚えのある声が聞こえた。
慧くんと同時に振り向けば、Dの下っ端を倒しながら駆け寄ってくる時人くんの姿が見えて、その周りには見知った顔がちらほら見えた。
獅鷹の皆、来てくれたんだ……。
「時人くん……」
「凛音、無事で良かった。怪我してない?大丈夫?」
「うん、大丈夫。何ともないよ」
あたしなんかより、時人くんの方がよっぽど傷だらけだと思う。
暴走族とは無縁に見える爽やかな時人くんが、今じゃすっかり暴走族の一員に見えるほど傷だらけになっていて。けど、それは時人くんだけじゃなく、Dと喧嘩してる獅鷹メンバーにも言える事だった。
みんな死に物狂いで目前の敵と戦っている。
「リン!!」
「リン大丈夫か!?」
合間合間にあたしに声を掛けてくれるメンバー達は、どう見てもあたしより大丈夫じゃない。それなのに、自分の事そっちのけであたしの心配をしてくれている。
「みんな……」
泣きそうになった。
皆がこんなに怪我してるのはあたしのせいなのに。あたしがおとりをしたせいでこんな事になっているのに。
それなのに守られているだけなんて……。
「慧くん、紐ほどいて!」
いつまでも守られてなんかいられない。
皆を巻き込んだのはあたしなんだから加勢しなきゃ!


