「凛音ちゃん……っ!!」


来ないで遥香さん!!


唯一動かせる首を使って、こっちに来ようとする遥香さんを制止させる。

それを見た遥香さんは嫌だと涙目で訴えてくるけれど、あたしはそれも顔を逸らして拒否した。


「やだっ!凛音ちゃん……!!」


充くんが無理矢理遥香さんを連れて行く。

あたしはそれを見届けた後、力尽きたかのように顔を伏せた。


……これでいい。これでいいんだ。
三人全員捕まるよりずっといい。



「行くぞ」


フンッと鼻を鳴らしたシンが、下っ端にそう命令する。

男達はその命令に従ってあたしを担ごうとしたけれど、それは“ある声”によって阻まれてしまった。


「……チッ」


その声は、あたしが待ち望んでいた人の声。


「んんっ!!」


間違いない。この声は十夜だ。

逢いたいと心から望んでいた人の声を、あたしが聞き間違える訳がない。


「んー!!」


直ぐそこに十夜が居る。

それは、諦めかけていたあたしの心に火をつけた。

動かない手足必死に動かして抵抗する。


「凛音!!」


その声に弾かれたように顔を上げれば、あたしに向かって手を伸ばす十夜の姿が目に飛び込んできて。

「んー!!」

真っ直ぐ伸ばされたその手に、今まで堪えてきた様々な感情が爆発した。