『……チヒロが連絡してきたのは、シンがこの前の抗争の残党を集めて鳳皇を潰そうとしている事を知らせる為だ』

「えっ?この前の残党?……って、また同じ事繰り返すつもりなの?」

『らしいな。……充、アイツを信用していいんだな?』

「……はい」


チヒロは鳳皇を騙した人間。

それは此処に居る充くんにも言える事だけど、今は咎めるつもりはないんだろう。

今、鳳皇が最優先しているのは、人質であるあたしと遥香さんの救出。

もし充くんを咎めるのなら、この抗争が片付いてからだと思う。


『分かった。じゃあ──っ』


そう言いかけて突然止まった十夜。

理由は聞かなくても直ぐに分かった。電話の向こうが急に騒がしくなったから。


「十夜!?」


呼び掛けてみるけど返答はない。

数人同時に喋っているせいかかなり聞き取りづらくて、でも、煌が何かを叫んでるのかは分かる。


『凛音!今すぐそこから出ろ!』

「えっ!?」


突然振られて、声が裏返った。


っていうか、今なんて……。


「逃げろって一体どういう──」

『シンがそっちへ向かってる!』