「それに、凛音ちゃんの事も悩んでた」
「……あたしの事?」
「うん。凛音ちゃんは遊大くんの件に関わってたけど、詳しくは聞かされてなかったでしょう?聞かされていたら鳳皇と関わろうとはしなかった筈。……そうじゃない?」
「……はい」
遥香さんの言う通りだ。
あたしが鳳皇に入るのを頑なに断っていたのは、貴兄が暴走族に入っていたから。
もし何かあって関わってしまったらややこしい事になりそうだと思って断り続けてた。
まぁその後、中田のせいで無理矢理入る事になったんだけど、もし、遊大の怪我が鳳皇の傘下である“白狼”のせいだと知っていたら絶対に関わってなかったと思う。
「凛音ちゃんが何も知らされてない事に気付いた時、十夜は思った。
凛音ちゃんが真実を知ってしまったらどうなってしまうんだろうって」
まるで自分の事の様に沈んでいく遥香さんを見て思い出した。
そう言えば、マンションの非常階段で語ってくれた十夜も全く同じ表情をしていた。
見ている方が苦しくなるほど哀しみに満ちた表情(カオ)を。
「何も知らなかったといっても、仲間の敵である鳳皇と一緒に過ごしてたんだもの。凛音ちゃんは絶対に自分を責める。
ううん、それだけじゃない。自分の怪我が“リン”との喧嘩で負ったものだと知られてしまったら、絶対に傷付く。だから、このまま身を引いた方がいいのかもしれないって思った」


