「……あたし、喧嘩には参戦してなかったんです。
獅鷹には行ってましたけど、受験生だったので夏以降は倉庫に引きこもって勉強教えて貰ってました」
本当は遊びたかったんだけど、あの頃は遊びどころじゃなかったんだよね。
優音みたいに出来が良かったら遊びまくってたんだろうけど、なんせ超が付く程お馬鹿だったからそんな余裕全くなかった。
「そうだったんだ……。きっと十夜がリンくんを見つけられなかったのは凛音ちゃんと出逢う為だったんだね」
「え……?」
あたしと出逢う為?
「凛音ちゃんと出逢った頃はね、十夜、まだリンくんの事が好きだったんだよ。十夜が初めて好きになった人だもん。見つからないからって諦めなかった」
「………」
「けどね、凛音ちゃんと出逢って、次第にリンくんよりも凛音ちゃんの存在の方が大きくなっていったの。
留学中に十夜から連絡来た時はビックリしたのよ?だって、あんなにリンくんの事追いかけてたのに、突然『気になる奴が出来た』って言ってきたんだもの。正直、何それって思ったわ」
呆れたように肩を竦めて見せる遥香さんに、原因であるあたしは曖昧に笑い返す事しか出来ない。
だって、今はこんな風に笑ってるけど、当時は言葉通り、“何それ”って思ってただろうから。
あたしだって遥香さんの立場だったら絶対そう思ってる。


