「よっぽど印象的だったんだと思う。“自分を見る瞳が頭に焼き付いて離れない”って言ってたから」
「十夜……」
あたしはあの時、十夜の事が憎くて仕方なかった。遊大に怪我を負わせた男達が許せなかった。
怒りに身を任せて喧嘩を吹っ掛けたのに、それでもあたしを好きになってくれたなんて……。
「ねぇ凛音ちゃん。鳳皇と出逢ったばかりの時、十夜が夜、外出してたの知ってる?」
「外出……?それって獅鷹に行ってたっていう?」
出逢ったばかりの頃、十夜は時々一人で外出していた。
メンバーが尾行したら獅鷹の所へ行ってたって言ってたけど、そういえばその理由はまだ不明のままだ。
夏祭りの日、貴兄にも聞かれてたけどハッキリ答えてなかったし。
「そう。あれね、リンくんを捜しに行ってたの」
「えっ!?」
リンを捜しに!?
「私と別れてから半年の間、獅鷹関連の情報が入る度足を運んでた。獅鷹との関係が悪いにも関わらずね」
「……桐谷さんが、そこまで……?」
独り言の様に、ぽつり、そう呟いた充くん。
驚くのも無理はない。
だって、あたしも信じられないから。
好きな子に逢いに行ってるんだろうって思ってたけど、それがまさかリンに変装したあたしだったなんて……。


