Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】



十夜の彼女。


それは、遥香さんにとって特別なもの。

望んで望んで……自分からは捨てられなかったもの。



「でもね、私はこれで良かったと思ってるの。好きな人が出来たって聞いた時は哀しかったけど、その反面物凄く嬉しかったんだ。

だって、十夜が家族以外に愛せる人を見つけたんだもの」


「遥香さん……」


ふふっと嬉しそうに笑う遥香さんは、本当に心の底からそう思っているようで、そんな遥香さんを充くんが哀しそうな目で見つめ返している。


「充くん、そんな顔しないで。私、十夜の好きな人が凛音ちゃんで良かったって本当に思ってるのよ」


「遥香さん……」


「……ねぇ凛音ちゃん、十夜と私の交際期間を聞いて変だとは思わなかった?」


「変?」


唐突にそう聞かれて、うーん、と考え込む。

けど、馬鹿なあたしがすぐに応えられる訳がなく、結局遥香さんに助けを求めてしまった。


「私と十夜が別れたのは去年の夏なの」

「はぁ……」


それは知ってるけど……。


「私、さっき言ったよね?十夜と別れたのは十夜に好きな人が出来たからだって」


「……っ、どういう事ですか、遥香さん!桐谷さんとの約束を守ったのなら、この人と出会う前に別れるのはおかしいじゃないですか!」


「えっ!?」


どういうこと?


突然遥香さんに噛み付いた充くんに頭が混乱して理解出来ない。


「その言葉のままの意味よ、充くん。十夜は凛音ちゃんを好きになる前に別の人を好きになったの」