Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】




「充くん、十夜が来るまで話したい事があるの」


「……はい」


「凛音ちゃんにも」


「え?あたしにも?」


「うん。まだ話してない事があるから」


「……分かりました」


遥香さんに「座ろう」と促されて、その場に腰を下ろす。


すると遥香さんは、一息もつかない間に口を開いた。


「十夜との事なんだけど……」


その言葉から始まり、続いていくのは、あたしが鳳皇に帰ってきた日に聞いた十夜の家族の話と、二人の過去。


初めは強張った表情で聞いていた充くんも、話が進むにつれて次第に頭が垂れていく。


その反応はあの日のあたしと全く同じだった。


哀しくて寂しい十夜の過去と、それを支え続けた遥香さんの気持ち。それが痛いほど伝わってくる。



「……ごめんね、充くん。私は充くんが思ってるほど良い人間じゃないの。一番近くに居たのに何も言わなかった。……ううん。言えなかった」


──近い存在だったからこそ知られたくなかったの。


そう言った遥香さんは、今にも泣きそうな顔で微笑んだ。


無理してるのが分かるその笑顔に、充くんがこぶしを強く握り締める。



今、充くんの中では様々な感情が渦巻いているんだと思う。


あたしもこの話を聞いた時混乱したから。

理解するのに時間がかかった。


それほど十夜の家庭事情は複雑だったんだ。