「十夜、実はDの幹部此処に居ないの」
『……幹部がいない?どういう事だ』
「えっと……よく分かんないけど、充くんに協力してくれたチヒロが上手い事?してくれたみたいで、今はいないみたい」
『……よく分かんねぇけど、幹部はそこに居ないんだな?』
「うん。けど、時間稼ぎみたいなものだからもうすぐ帰ってくるかもって」
そう考えたらやっぱり此処から逃げた方がいいのかな?
『もし奴等に見つかりでもしたら何されるか分からない。だから、俺達が行くまでお前達はそこに居ろ』
「……うん。分かった」
十夜がそう言うなら此処で大人しく待っていよう。それが一番いい。
「じゃあ此処で待ってるから気をつけて来てね」
『あぁ。直ぐに行く』
まるで二人の間に何もなかったかの様なその会話に自然と笑みが零れる。
あぁ、そういえば抗争が始まる前はよくこんな会話してたっけ。
内容は少し違うけど、抗争に行ったり傘下の所へ行ったりする時、『待ってるから気をつけて行ってきてね』って言ってた気がする。
「また、後でね」
『……あぁ』
普段は大して気にしていない普通のやり取り。
だけど、今はそんな会話も大切だと思える。
“また後で”
それは未来へと続く大切な約束。
十夜に逢えるっていう、確かな“約束”。
待ってるから、気をつけて来て。
十夜……。


