Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】



十夜が、あたしと話したい?



「………」


「凛音ちゃん?」



携帯を受け取ろうとしないあたしを見て、不思議そうに首を傾げる遥香さん。


受け取らなきゃいけないって分かってる。


……けど、どうしても受け取る事が出来ない。


だって、まだ心の準備が出来てないから。


こんな急に十夜と話だなんて……。


でも、この状況で出ない訳にはいかない。


だから、恐る恐る遥香さんから携帯を受け取った。




「……もしもし」



声が震える。


当たり前だ。

だって、十夜と話すのは“あの時”ぶりだから。


あたしが十夜を傷付けたと知った、あの日ぶり。緊張しない訳がない。








『──凛音』


「……っ」


数日ぶりに聞く十夜の声は、本当に“真実”を知ってしまったのかと疑いたくなるほど普段と同じで。


遥香さんの前だからなんとか我慢する事が出来たけど、いなかったら絶対に泣いてた。






『どこも怪我してないか?』


「……うん」


『そうか。良かった』


「……っ」


安堵しきった弱々しい声。



……馬鹿だ、あたし。

全然普段通りなんかじゃない。


今の会話で分かってしまった。


真実を知っても十夜の想いは変わっていないことを。