「此処でDを潰すつもりですか?」
「……そうするのが一番いいって事、充くんも分かってるでしょ?」
「………」
無言は肯定の証。
充くんも分かってるんだ。
鳳皇に勝てないって事を。
「充くんは遥香さんを連れて逃げて。あたしは此処で鳳皇を待つから」
「そんなの駄目ッ!凛音ちゃんも一緒じゃなきゃ……」
「遥香さん!」
声を荒らげる遥香さんに小さく首を振る。
「あたしは大丈夫です。自分の身は自分で守ります」
「そんなの──」
「Dはあたしに何かするつもりはないと思います。あたしを拉致したのは鳳皇をおびき寄せる為ですから」
まぁ、ピンチになったらあたしを人質にしようとするかもしれないけど、その時は大人しくしてやらない。
これ以上鳳皇のお荷物になりたくはないから。
「だから、行って下さい」
「凛音ちゃん……」
遥香さんの瞳が戸惑いに揺れ動く。
それを後押しするように充くんが「行きましょう」と遥香さんの腕を引いたけど……。
「じゃあ私も此処に居る」
遥香さんは動こうとはしなかった。
「……っ、そんなの、」
「駄目です遥香さん!」
あたしの言葉を遮った充くんが掴んでいる手に力を込める。
けど、遥香さんの視線があたしから逸れる事はなかった。
ただ真っ直ぐ、あたしを見つめる。


