「出て行って大丈夫なの?」
「外にいた見張りは気絶させました。此処のビルにいる人間はもういません。チヒロが上手い事してくれたので」
「智広くんが上手いこと?」
それってどういう意味?
充くんに協力してるって事?
チヒロはDでしょ?
なんでそんな充くんに味方するような事……。
「……アイツは分かってるんです。何をしても鳳皇を潰せないって事。だから……」
「充くんに協力してくれたの?」
「……はい」
鳳皇は潰せない。
そう思ってはいても、幹部だったらトップに逆らう事はしないと思う。
トップがシンみたいな我の強い人間だったら特に。
チヒロが充くんに協力しようと思ったのは、あたしと遥香さんが一緒に居たから。
あたしだけなら逃がそうなんて思わなかった筈。
チヒロが協力してくれたのは充くんの為。
遥香さんを想う、充くんの為。
「……遥香さん、あたし此処に残ります」
「えっ!?」
「充くん、シンは此処にいるの?」
「今はいない。けど直ぐに戻って来る」
「そう。──遥香さん、携帯貸してくれませんか?」
「……っ、ちょっと待って、どういう──」
「あたしが此処にいないと意味がないからです」
「意味が、ない?」
そうだ。
意味がないんだ。
「あたしはDを潰す為におとりになろうとしたんです。此処にシンが居るなら此処を動くべきじゃない」
あたしが逃げたらシンも追って来る。
そんなイタチごっこをするぐらいなら、此処で一気にカタをつけた方がいい。


