「充くん、此処は何処なの?早く逃げた方が……」
「大丈夫です。シンは俺が来た事に気付いていません。チヒロが内密に教えてくれたので」
「チヒロが?」
どういう事?
なんでチヒロが……。
「シン達は遥香さんの携帯がGPS機能付きだと知らないので、自分達が呼ばない限り鳳皇が来る事はないと思ってます」
「……っ」
なんで遥香さんの携帯がGPS機能付きだって事………あ、そうだ。充くんは遥香さんの護衛をしてたんだった。
だったらGPSの事も知ってて当たり前だよね。
「じゃあ今の内に逃げなきゃ……」
「……そうですね。大丈夫だと言ってもいつ来るか分からないですから」
「でも、何処に……」
「大丈夫です。それも手配済みです」
抑揚のない声で言い放った充くんに、「そっか」と寂しそうな笑みを浮かべる遥香さん。
遥香さんからすれば、今の充くんは遥香さんの知ってる“充くん”ではないのだろう。
あたしだって今の充くんを見た時、別人かと思ったから。
だって、前の充くんとはまるで雰囲気が違う。
前の充くんは簡単に言うと穏やかで、いつも笑顔だった。
今の充くんはピリピリしていて、少し怖い。
まぁ、それは遥香さんの天敵(充くんの中で)であるあたしが此処にいるからだろうけど。


