流石にあれだけの人数を中田一人ではさばけないだろうから、早く戻って加勢しないと。
本当ならさっきみたいに一人で行ってもらった方が良かったんだけど、新たな敵が出て来るかもしれない。
遥香さんだけは無事に帰って貰わなきゃ!
「……っ、なんで……っ」
──そう思ったのに、その願いは叶うことはなかった。
「──数日ぶりですね。凛音サン」
やっとのことで運転手さんの所へ辿り着いたと思ったら、新たに現れた数人の男達。
「チヒロ……」
その男達の中心にいたのは、あたしがよく知る人物──“D”の幹部のチヒロだった。
「……っ」
まさか幹部が来るなんて……。
来るとしたら下っ端かと思ったのに。
……どうしよう。マズイ状況になってしまった。
すぐ傍には遥香さんがいて、唯一の味方である中田は今、Dの下っ端と喧嘩している。
どこからどう見ても不利な状況。
「………」
けど、今更どうこう言っても仕方ない。
今はこの状況をどう切り抜けるか、だ。
「アンタ──」
「智広くん!充くんは今どこにいるの!?教えて!」
「遥香さん!!」
チヒロの元に駆け寄ろうとする遥香さんに手を伸ばして、慌てて引き止める。
充くんと常に行動を共にしていたんだ。
チヒロと遥香さんは顔見知りなんだと思う。
だからと言って、チヒロに近付ける訳にはいかない。
だって、チヒロはもう“敵”なのだから。


