「……ねぇ、離してくれる?」
ジリッと詰め寄って、ニッコリと微笑む。
すると、失礼なことに男達はあたしの笑顔を見てさらに顔を引きつらせた。
乙女の笑顔を見て顔引きつらせるとかありえなくない?
「まぁ、素直に離してくれる訳ないよね」
肩を竦めながら目配せしたあたしと中田は、同時に地面を蹴った。
「なっ……」
突然攻めてくるとは思っていなかったのか、あたし達に手を出す暇もなく遥香さんを奪い取られてしまった男達。
すぐに奪い返そうとしてくるけど、遥香さんには届かない。
当たり前じゃない。
「あたしがいるのに奪えるとでも思ってんの?」
伸ばしてきた男達二人の腕を片方ずつ掴み、地面を蹴って右側の男の脇腹に蹴りを入れる。
左側の男は倒れ込んでくる男を避けようと横に跳ぶけど、そんなのあたしが許す訳がない。
「これも計算の内だし」
すぐさま右足から左足へと切り替え、さっきと同じように男の脇腹に蹴りを入れる。
そして、男の身体が左へと傾いた所で掴んでいた腕を離し、代わりに遥香さんの腕を引いた。
「遥香さん、今の内に早く!」
他の奴等は中田に任せて、再び運転手さんの元へと駆け出す。


